イーニド

20111018

ひとんちのメシを食った話

色々あったけどこのことだけは私の頭に鮮烈に残っていて、何日か過ぎたけどあの味とか安心感とか思い出すから、書き残しておこうと思った

あの日、仕事でめちゃくちゃになって、私生活の方もちょっとよくわからない感じになっていてフラフラで、誰にも会いたく無い、けど、一人でも居たくない、どうしよう、口を聞かなくても、逆に一人ごとを言いまくっても安心な、泊めてくれそうな人、そうだあの人だッ、と適当な相手に突撃予告のメールを打ち、相手の乗り換え駅で待ち合わせた
何も喋りたく無かったのだけれど、その人の部屋に着くなり、荒れた精神状態の原因とはまるで無関係な内容の無いことばかりワアワアと喚いてしまったような気がする

泊めてくれた人は、ごはんを作ってくれると言ってくれた
その人が台所に立っている間、色々な台所の音を聞きながら勝手に本棚から文庫本を取り出して読んでいたのだけど、なんだか序盤は地球を飛び立つ最後の日を過ごすカップル(?)の話で、どうしてこうも小説のキャラクターというものは完璧な人間ばかりなのだろう、完璧じゃない人間がザクザク出てくる話とか、冒頭から意味不明な話のほうがいいに決まってる、とか、SFを読むに当たって場違いな事ばかり考えていた(序盤し数ページか読んでないのでどういう話なのかは全くわかっていないのだが タイトルも覚えていない)

そうこうしているうちに、部屋の主が出来上がったごはんを持って来てくれた
私はこのところ変なものばかり食べているせいか、単に不摂生なのか腹を壊していて(今も若干おかしいが)、空腹にも関わらず喰えば痛むという状況だったのだけれど、それを気遣ってくれたのか単に本人が喰いたかっただけなのかは知らないが、出してくれたお皿を覗けば、いかにもお腹に優しい感じのごはんだった(メニューはなんとなく伏せておく)
自分ではあまり作らない感じのにおいがして、また、実家に居たって母親の手料理すら週末か母親の休日くらいしか食べていなかったから、外食などでなく自分以外の他人が作ったごはんというものが、ただそれだけで、じんとくるものがあった
単に、猛烈に仕事に私生活に疲弊していたのかもしれない、自分が自分を愛さなくちゃ誰が私を助けるのかと気張っていたけど、そういったものがするするとどうでもよくなっていくような気がして、パクパク食べながら、おいしいよーおいしいよーと唸りながら、必死で泣きたいのを堪えていた
実際本当においしくて、人間はこういうものを食べるべきだと心から思ったし、バカな料理漫画じゃないけど、口に入れた瞬間ほわっと気持ちが柔らかくなっていった
本当に優しい味だと思った
生きることと食事は直結しているよなあと最近思っていたのだけど、生きるためのごはんっていうのはこういうもののことなのかもしれない
自分がちょっと疲れておかしくなってたからこんなことを思ったのかもしれないけど、例えそうであったとしても、このごはんは、少なくともこの時の私にとっては重要だったんだなあと後から思う
生きるためのごはんを作ってくれたあの人には、本当に心からありがとうという気持ちでいっぱいで、何より、あまり深く事情を聞かずに黙ってそこに居てくれて、私が勝手に本とか読んでてもその人はその人で勝手にやってて、人選は間違ってなかったなあなんて、現金なことを思ってみたりもした
どうせ、本人にしてみれば、生きるためのごはんなんてつもりは全く一切ありゃしないんだろうし(というかこうしてメシを作成するということ自体が日常なのだろうし)、なんとなくうるさいから泊めてみたくらいだったんだろうけれど、それでも私は嬉しかった
何か御礼がしたいなと思うけれど、何をしたらいいのかというのはまだ思いつかない
私は料理も下手だし、不器用すぎるし、何より自分しか見ていないから人を読む力もない
この事実が悔しいので、何かをどうにかしなくちゃな、というのは未だ思案中である

いずれ、私もこういうごはんを作れるようになりたいなと思う
怠惰な生活にサヨナラをしよう、ちゃんと生きよう