イーニド

20100407

お話

電車の音が聞こえるフェンスの坂道の上に、お寺があります
(毎朝6時になると聞こえるボーンという鐘の音は、ここから聞こえているのです)
女の子は、そのお寺の入り口の階段にいました

フェンスごしに聞こえる電車の走る音
お気に入りの紅茶を半分、溝に流して、ペットボトルの灰皿を作ります

それはとても悲しいことでした

一日置きに雨が降る季節の変わり目に、女の子はこの場所を見つけました
女の子を知っている人はそこそこいるけれど、女の子を知っている人はみんな、この場所を知りませんでした

きれいな色の紅茶に、灰を落とす度に、女の子は悲しい気持ちになりました
沈んだ吸殻をペットボトルの底から確認する度に、女の子は悲しい気持ちになりました

桜の花は、曇り空に少し赤を混ぜた色に似ています
どの色の絵の具に白い絵の具を混ぜても、こんなような濁った色になるなあ、と、女の子は思いました

女の子は、ポケットから白い絵の具を取り出して、ポトリと落としました

灰を落とした紅茶に一滴

足下に一滴

お寺の入り口の階段に一滴

降りだした雨に一滴

自分の目に、一滴


景色は濁ったまま、何もかもが同じでした
女の子は残念そうに首を振ると、青い傘を差して、家に帰りました